Ri.Night Ⅲ
「凛音!!」
即座に身体を半回転させ、その場から逃げるように走り出す。
違う。“逃げるように”じゃない。逃げたんだ。
頭で考えるよりも先に身体が反応した。
此処から逃げなきゃいけない。
十夜から逃げなきゃいけない。
そう、脳が判断した。
「凛音!!」
直ぐ真後ろから聞こえる十夜の声。
その声に十夜が追い掛けてきてるんだと分かって、走る速度を速める。
なんでもっと早く十夜の存在に気付かなかったのだろう。
自動ドアが開く前に気付いていれば十夜がマンションに入って来ることはなかったのに。
そんな事を今更言ったってもう遅いって分かってる。
けど……。
それよりも、今はどうやって十夜から逃げるのかを考える方が先決だ。
どうするどうするどうする。
走りながら頭をフル回転させる。
エントランスを全速力で走り抜け、さっき乗ったばかりのエレベーターを目指したけど、そこにはもうエレベーターはなく。
どうしよう。
そう思った時、エレベーターの直ぐ真横にある外階段が目に飛び込んできた。
滅多に使われる事のないその扉を押し開けて外に飛び出す。
外に出るまでを時間にすればほんの数秒の出来事だったけど、あたしにとってはとてつもなく長い時間に感じた。