Ri.Night Ⅲ
「……はぁ……っ」
目前に広がるコンクリートの外階段を一気に駆け上がる。
「凛音!危ねぇ!」
折り返し地点に到達した時、背後から聞こえた十夜の叫び声に振り返ると、顔を歪ませた十夜と目が合った。
「凛音!」
目が合った瞬間呼ばれる名前。
射るようなその双眸に心臓が大きく音を立てる。
けど、立ち止まりはしなかった。
反対にそれを振り切るように走る速度を速める。
「……はぁ……は…っ、」
息が切れて思うように前へ進まない。
駆け上がるしんどさじゃなく、背後から迫り来る圧迫感に押し潰されて足が上がらない。
………っ、なんでっ!!
なんで十夜が此処にいるの!?
なんで追い掛けて来るの!?
もう、やだっ!!
折角決心して別れたのになんで……!!
なんで、何度も目の前に現れるのっ……?
あたしにはもう“別れ”は耐えられない。
あの苦しみは受け止められない……!
「あっ……!」
「凛音!!」
極限まで動かしていた足がもつれ、思いっきり階段を踏み外す。
と同時に訪れる浮遊感。
「凛音!!」
身体が後ろへと倒れていく。
落ちる……!!