Ri.Night Ⅲ

「やっ………!」


何度も何度も繰り返されるそのキスに、頭が真っ白になっていく。


「とぉ……」


息継ぎをする間に言葉を発しようとすると、それを遮るように塞がれて。


十夜の大きな手があたしの後頭部を更に強く引き寄せる。


唇から伝わる十夜の熱のせいでもう何も考えられない。



離れた瞬間、触れる吐息。


引き寄せる手の強さとは裏腹に、触れられる唇は回数を増す毎に優しくなっていく。


「やだ……っ、」



けど。


あたしにはまだ自制心が残っていた。



……こんなの、嫌だ。


こんなのあたしを大人しくさせる為にしてるだけじゃない。


これも、身代わり?

このキスも身代わりなの?


痛いよ。凄く痛い。


優しいキスを繰り返される度あたしの心に傷が刻まれる。



なんであたしがこんな目に合わなきゃいけないの?

なんで苦しい思いをしなきゃいけないの?


酷いよ。


もういい加減あたしを解放してよ……っ!



「この口が言ったんだ」


「……っ」


「この口が俺に『好き』だと言った」


何度も落とされる唇。


後頭部に回されていた右手がゆっくりと移動し、左頬を包み込む。


もうあたしには、この熱が暑さの所為なのか、それとも十夜の体温の所為なのか、それさえも分からなくなっていた。

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