Ri.Night Ⅲ
「お前が傍に居ないとろくにメシも食えない」
っ十夜……。
「お前が隣に居ないと、眠れない」
とぉ、や……。
「お前が居ないと、“俺”じゃいられない」
「……ぅ……っ」
「だから、離してやれない」
それって……。
「俺を、拒絶するな」
それって……。
「お前に拒絶されるのは……つらい」
……嘘だ、違う。
だって、あたしは……。
「十夜……」
握られた右手をおもむろに動かすと、十夜の手がするりと解かれた。
「十、夜……」
温もりが無くなった手で、十夜の左頬にそっと触れる。
「凛音……」
……十夜。
あたしは、遥香さんの身代わりじゃないの……?
「俺は……あの時言った言葉を撤回したつもりはない」
「……ぇ?」
「“お前は、俺の傍から離れるな”」
「………っ!」
あ……。
「それまで忘れたとは言わせねぇぞ」
……っ、十夜……。
その言葉で、堪えていた涙が瞳からポロリと零れ落ちた。
「……ぅ……」
もう、どれだけ我慢をしても無理だった。
一度溢れ出したら最後、それを止める術など知らない。
「……ふ……っ、」
“あの時”の言葉を、今のあたしにも言ってくれるの?
『鳳皇を抜ける』と言ったあの時、十夜は『お前は俺の傍から離れるな』と言って引き止めてくれた。
あの言葉を、今のあたしにも言ってくれるの?
貴兄の……獅鷹総長の妹だと分かっても言ってくれるの……?