Ri.Night Ⅲ


「お前が傍に居ないとろくにメシも食えない」


っ十夜……。


「お前が隣に居ないと、眠れない」


とぉ、や……。


「お前が居ないと、“俺”じゃいられない」


「……ぅ……っ」


「だから、離してやれない」



それって……。



「俺を、拒絶するな」



それって……。



「お前に拒絶されるのは……つらい」



……嘘だ、違う。


だって、あたしは……。



「十夜……」



握られた右手をおもむろに動かすと、十夜の手がするりと解かれた。


「十、夜……」


温もりが無くなった手で、十夜の左頬にそっと触れる。


「凛音……」



……十夜。


あたしは、遥香さんの身代わりじゃないの……?




「俺は……あの時言った言葉を撤回したつもりはない」


「……ぇ?」


「“お前は、俺の傍から離れるな”」


「………っ!」



あ……。



「それまで忘れたとは言わせねぇぞ」



……っ、十夜……。



その言葉で、堪えていた涙が瞳からポロリと零れ落ちた。


「……ぅ……」



もう、どれだけ我慢をしても無理だった。


一度溢れ出したら最後、それを止める術など知らない。



「……ふ……っ、」



“あの時”の言葉を、今のあたしにも言ってくれるの?


『鳳皇を抜ける』と言ったあの時、十夜は『お前は俺の傍から離れるな』と言って引き止めてくれた。


あの言葉を、今のあたしにも言ってくれるの?



貴兄の……獅鷹総長の妹だと分かっても言ってくれるの……?

< 305 / 368 >

この作品をシェア

pagetop