Ri.Night Ⅲ

両手で十夜の頬にそっと触れる。


「十夜……」


震える指先から確かに感じる十夜の温もり。


「十、夜……」


震える唇で名前を紡ぐ度、涙が零れ落ちて。


「十夜……」


手のひら一杯に十夜の温もりを感じた瞬間、やっと十夜から好きだと言われた事を実感した。



「凛音……」


十夜の頬を包み込んでいるあたしの手に、十夜の手が被さる。


「十夜……」


それだけで嬉しかった。


伸ばした手を受け入れてくれる。


それだけで心が満たされた。



頬と手。両方から伝わる十夜の温もりに閉じ込めていた想いが一気に溢れ出す。



──やっぱり、好きだ。どうしようもなく。


こんなに好きと思える人は十夜しかいない。


好き過ぎて、苦しい。


苦しくて苦しくて、胸が張り裂けそうになる。


だけど、今はその苦しささえも愛おしく感じた。


今までの“好き”の苦しさとは違う苦しさ。


十夜の言葉によって芽生えた“好き”は、今までとは違う苦しみをあたしに与える。


嬉しすぎて苦しい。


十夜を想いが嬉しくて心が震える。


十夜への愛しさが胸を痛いぐらい締めつける。


涙が、溢れて止まらない。



まさか、まさか十夜に好きだと言われるなんて思わなかった。


そんな夢みたいな事、絶対ないと思ってた。


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