Ri.Night Ⅲ
今もまだ信じられない。
けど、十夜の必死に伝えようとする想いが、
泣きそうな表情が、微かに震える手が、
あたしの心に確かに響いた。
正真正銘、十夜の想い。
そんな十夜の想いにあたしも応えたいと思った。
十夜の事が好きだと。
ずっとずっと前から十夜が大好きだと。
自分の抑えてきた想いを全て伝えたいと思った。
だけど、あたしにはそれが出来ない。
十夜の想いに応えられない。
獅鷹と鳳皇に溝がある限り、あたしは十夜にこの想いを伝えれないんだ。
伝えちゃいけない。
あたしはもう、哀しませないと誓ったから。
貴兄と優音を哀しませないと誓ったから。
だから──
「十夜。あたしは──」
「分かってる」
「え……?」
「お前の考えてる事は分かってる」
分かって、る?
あたしの言葉を遮った十夜が理解不能な言葉を落とす。
十夜の言ってる意味がよく分からない。
どういう……こと?
「何も言わなくてもいい」
「え……?」
「俺の想いに応えなくていい」
「……っ、」
十夜はそう言って顔を少しずらし、頬にあてていたあたしの手のひらに口付けた。
「……っなん、で?」
その仕種に過剰に反応しながらも小さく問いかける。
「俺が伝えたかっただけだから」