Ri.Night Ⅲ
「……おじさん、ありがとう」
言葉だけじゃ言い表せない程の感謝を、おじさんにギュッと抱きついて伝える。
そんなあたしにおじさんは「こらこら凛音ちゃん!」と声を上擦らせてあたふたしたけど、離れた時にはいつもと変わらない優しい笑顔を向けてくれた。
「凛音ちゃん、幸せになるんだよ」
そう言って、おじさんがくれたのは棒つきの飴。
「うん!おじさんも幸せになってね」
その飴を受け取って、「ありがとう!」とお礼を言う。
おじさんがくれたのはピンク色のハート型の飴だった。
寄り添うように二つ並んだその飴を見ると、なんだかおじさんが『頑張れ』と応援してくれているような気がして、嬉しくなる。
「ほら、早く行きなさい。彼が待ってるよ」
「うん。おじさん本当にありがとう!」
おじさんに手を振って、踵を返す。
「あ、凛音ちゃん、ちょっと待って!」
「……へ?」
ドアノブに手を掛けようとした瞬間、おじさんに引き止められて振り返ると。
「彼の名前を教えてくれるかい?」
穏やかな笑みを浮かべたおじさんがそう問い掛けてきた。
……名前?
突然の質問に思わずキョトンと目を見開く。
そんなあたしとは反対に、おじさんの表情は笑顔のまま。