Ri.Night Ⅲ
「……っ」
足を踏み出す度言い様のない寂しさが込み上げる。
少しずつ、だけど確実に離れていく十夜との距離。
自分から離れる。
離れたくないのに、どうして……。
そう思った時にはもう、歩いていた足を止め、後ろを振り返っていた。
さっきよりも小さく見える十夜の背中。
頭が後ろに傾いているのはきっと、空を見つめているから。
十夜……。
哀愁漂うその姿にどうしようもなく胸が締め付けられて。
気付けば、あたしはその背中に向かって走り出していた。
「──っ、」
ドンっと十夜の背中に飛び込み、後ろから力一杯抱き締める。
十夜、十夜、十夜……。
心の中で何度も何度も名前を呼び、隙間を埋める様に強く抱き締めた。
「……馬鹿が」
聞こえてきたのは苦しげな、それでいて切なげな声。
無理矢理吐き出した様なその声にもう涙は堪えられなかった。
……うん。あたしは大馬鹿だ。
後ろを向いてと言ったのはあたし。
それなのに、自分から戻ってきてしまうなんて。
でも、馬鹿でもなんでも伝えたかったの。
ずっと待ってくれていた十夜へ、
自分の想いを全て伝えてくれた十夜へ、
どうしてもこの想いを伝えたかった。
ううん、伝えなきゃいけないと思った。