Ri.Night Ⅲ
「次は離してやれねぇからな」
十夜は切なげにそう一言溢すと、あたしから手を離してトンッと肩を軽く押してきた。
「行け」
十夜……。
あたしを見つめる十夜の表情は見ていられない程哀しげで。
放たれた声は小さくも力強く感じた。
十夜の表情に、その声に、足が思うように動かない。
けど、これ以上一緒にいると本当に離れたくなくなってしまうから。
「……うん」
あたしは小さく頷いて、その場から力一杯走り出した。
もう、振り返らない。
立ち止まりもしない。
自分の為に。
十夜の為に。
いつかまた逢える事を信じて。
一緒に居られる事を信じて。
あたしは前へ突き進む。
夢見る明日に向かって。
獅鷹と鳳皇が和解する未来に向かって。
前へ進む。
十夜、ありがとう。
本当に本当にありがとう。
「──大好き」
十夜への想いは流れる涙と共に宙を舞い、儚く空へと消えていく。
いつか、逢える日まで。
いつか、直接伝える日が来るまで。
この言葉とも、さようなら。
「十夜、大好き──」