Ri.Night Ⅲ
59.それぞれの行方
────…
「凛音、お前何処行ってたんだよ?」
「……あ、引っ越しの片付けに行ってたの。ごめんね、言わずに言って」
タイミングが悪いとはこういう事を言うのだろうか。
玄関を開けた途端、優音と鉢合わせしてしまった。
良かった。赤み引いてから帰ってきて。
優音鋭いから、目赤くなってたら突っ込まれそうだし。
「次からはメールぐらい入れとけよ」
「うん、ごめん。……っていうか、優音、何処か行くの?」
バイクのカギ持ってるって事はそういうことだよね。
「……ちょっと、倉庫にな」
「そっか。貴兄は?」
「もうすぐ来る」
「……あ」
ホントだ。
タイミングを見計らったかのようにリビングから出てきた貴兄。
「凛音、帰って来てたのか」
「……うん、今」
「引っ越しの片付けに行ってたんだってさ」
「そうか。片付いたか?」
「うん。もうすぐ終わる」
当たり前と言えば当たり前なんだけど、貴兄はいつもと変わらず優しい。
頭を撫でてくれる大きな手も向けられる優しい瞳も、いつもと変わりない。
いつもと違うのはあたしの方だ。
十夜の事があるからか、後ろめたくて真っ直ぐ目を合わせられない。
貴兄の優しすぎるその笑顔が、罪悪感を蓄積させる。