Ri.Night Ⅲ
「煌、それ以上からかうと陽泣くから」
「な、泣かねぇし!」
「まだまだ子供でちゅねー陽ちゃんは」
「彼方!テメェー!!」
陽が憤慨しながらピョンと彼方に飛びかかる。
……オイオイ、喧嘩おっ始めやがったよ。
自分から仕掛けたにも関わらず他人事の様に煙草を吹かしながら二人を眺める俺。
これから忙しくなるっていうのに呑気な奴等だなー。
「煌がからかうからこうなったんだよ。責任取って止めてきなよ」
「いいんだよ、ほっときゃ。どうせ今だけだ」
呆れた顔で肩を竦めてみせる壱に煙草を灰皿に擦り付けながらフッと笑みを零す。
そう、今だけ。
「すぐに慌ただしくなる。
そうだろ?十夜」
「………」
だから喋れっつーの。
無言で笑みを浮かべる十夜に今度は俺が肩を竦める。
……ったく、嬉しそうな顔してんじゃねぇよ。
そう毒づくが本心はその逆で。
口には出さないけど、俺を含めた四人全員、お前が元に戻って喜んでるんだぜ?
やっとだ。
やっと“鳳皇”が復活した。
一週間もの間、アイツを待っていたのは十夜だけじゃない。
俺達も待ち続けた。
歴代“鳳皇”の中で最も最強と呼ばれた“黒皇”が、“凰妃”になりし者の力を纏い再び此処へ舞い戻ってくるのを。
「……ったく待たせ過ぎだっつーの」
そう文句を言いつつも笑いが止まらない。
久しぶりに沸き上がるこの感覚。
黒皇が復活した今、俺達に怖いものはない。