Ri.Night Ⅲ
何だかあたしまで心配になってきて、駅まで送ってあげようかと本気で思い始めた時だった。
……ん?
ポケットの中から聞こえてきたのはスマホの着信音。
急いでスマホを取り出すと、画面に優音の名前が。
『もしもーし、優?』
『もしもーし、じゃねぇよ。お前今何処にいんだよ?』
受話口から聞こえてくる不機嫌丸出しな低音ボイスにヒクヒクと頬が引き攣る。
やっば~、優音すっごい怒ってる。
これは後で恐いかも……。
『ごめんごめん!今、下の化粧品売り場に居るんだ!』
『はぁ?化粧品売り場?お前もしかしてその格好で化粧品買いに行ったのか?』
『ん?そうだけど』
“その格好”?
優音様の怒声に今の自分の格好を思い出してみた。
『……あ』
『お前馬鹿だろ。いや、馬鹿としか言いようがない。っていうか馬鹿だという事をいい加減自覚しろ』
『……ちょっと、そこまで言わなくてもいいだろ』
馬鹿なのは自覚してるんだから。
そこまで馬鹿馬鹿言われたら流石の凛音ちゃんでも傷付く。
『仕方ねぇだろ、馬鹿なんだから。あぁ、もう、馬鹿はどうでもいいからさっさと上に上がって来い』
『はぁ?やだよ。優が下りてこいよ』
店から出るのになんで上に行かなきゃいけないのよ。
『アホか。そんな魔の巣窟に行けるかよ』
『………』
確かに。
貴兄と優音が来たら絶対あの魔の巣窟に引き摺り込まれるし。
それだけはマジ勘弁。
『分かったよ。じゃあ色ボケ男も連れていくからエレベーターの前で待ってて』
『は?色ボケ?オ──』
プツン。
あ、切っちゃった。まっいっか~。