Ri.Night Ⅲ
──“あの後”、貴兄と優音に連れられて倉庫の敷地から出ると、車道から少し外れた場所に一台の乗用車が停まっていた。
いつもの高級車とは違う一般的な乗用車。
その乗用車の助手席のドアに凭れていたのは獅鷹副総長、慧くんで。
『慧くん……』
『……凛音ちゃん、おかえり』
目が合ったあたしに、慧くんはいつもと変わらない穏やかな笑顔を向けてくれた。
何もかも知っている筈なのに、それでも変わらずに接してくれる優しい慧くん。
そんな慧くんに嬉しいっていう感情と申し訳ないっていう感情がぐちゃぐちゃに入り交じって。
ギュッと胸奥が締め付けられた。
『凛音ちゃん、帰ろっか』
何かを察したらしい慧くんが、小さく微笑んで後部座席のドアを開けてくれる。
まるであたしの心情を分かっているかのようなその哀しい笑顔に、自然と目線が下がっていった。
『凛音、早く乗れ』
後ろから優音にそう促され、慌てて車に乗り込む。
すると、続いて優音も乗り込み、反対側の後部座席から貴兄が乗り込んできた。
後部座席の真ん中があたしで、左が優音、右が貴兄。
助手席が慧くんで、肝心の運転手はと言うと───
『凛音ちゃん、久しぶり』
『……賢(ケン)くん?』
運転席には獅鷹幹部の“お兄ちゃん”と呼ぶべき存在、“賢くん”が居た。
『兄貴、挨拶は後でいいから早く出して。サツが来る』
『サツ?マジかよ』
慧くんの言葉に少しだけ慌てた賢くんは、挨拶もそこそこに急いで車を発進させる。