Ri.Night Ⅲ
「どうする?」
「……取り敢えず、これ以上近寄らせないようにするしかないな。もし居場所を突き止められたとしても連れては行かせない」
貴兄は絶対に鳳皇の元へは帰らせてくれない。
それは最初から分かっていた。
でも、もし十夜達が目の前に現れた時、あたしはどうしたらいい?
次は前みたいにはいかないって事は分かってる。
急がなければいけない状況でもない限り引いてはくれないだろう。
十夜達が納得する理由。
それって、何?
一緒にはいられない。
そんな理由じゃ十夜達は絶対に納得しない。
離れたいと思わせる理由がないと……。
「……っ」
そんな理由って、一つしかないじゃない。
あたしの兄が“獅鷹総長”だっていう理由しか。
やっぱりそれしかないんだろうか。
それしか、十夜達を諦めさせる理由はない?
それなら──
「……っ、十夜……」
言うしか、ないよね。
鳳皇との思い出が脳内を駆け巡って、涙が溢れる。
こんな所で泣いちゃ駄目だ。
誰に見られているか分からないし、貴兄達だっていつこっちに来るか分からない。
ここから去らなきゃ。
そうは思っているのに、足が思うように動いてはくれない。
……っ、動いてよ、馬鹿……!!
泣くのを堪えながら、自分の右足を思いっきり殴る。
それが効いたのか、足の感覚が戻ってきてグッと爪先に力を込めた。
早く此処から立ち去りたい。
その一心で震える足を必死に動かした。
「もし凛音を連れ去ろうとしたら──」
背後で貴兄がそんな事を言っていたなんてあたしは知る由もなかった。