Ri.Night Ⅲ
────…
「お前、こんなとこで何してんだよ?ってか、泣いてんのか?」
「優音……」
「何された!?」
「え?ちょ……!」
ツカツカと早足で近寄ってきた優音が、あたしの肩をガシッと掴んだかと思うと激しく前後に揺らしてきた。
「ちょ、優音!」
「誰にイジメられたかって聞いてんだよ!」
「は?イジメ?」
何のこと?
「来い、行くぞ!」
「ちょ……ったぁーい!優音!痛い痛い痛い!!」
「……は?」
引っ張られた左手に激痛が走って、優音の肩をバシバシ叩く。
「取り敢えず離して!」
そう言うと、優音は掴んでいた手首を離してくれた。
ったくもう!痛いっつーの!
じんわりと血が滲んでる左手の手のひらにフーフーと息を吹きかけて痛みを和らげる。
「……お前、もしかして転けたのか?」
「うん。さっき躓いて転けた」
そう。
あれからあたしは、力の入っていない足で無理矢理歩いたせいか、何もないところで躓いて転けた。
前のめりに倒れ、咄嗟に左手を前へ出したけど、当然左手だけじゃ全体重を支えられるはずもなく、そのまま前へとスライディング。
右手を出せば支えきれたんだろうけど、たらこと明太子を持っていたから無理だった。
お陰で床についた左手は見事な擦り傷に。
これがまた地味に痛くて。
拭いても拭いても血が出てくるし、傷口はエグいし。
見るだけで痛さが増してきて、自然と涙が出てきた。
「ったく何してんだよ。ほら、見せてみろ」
「うっ。あ、あまり痛くしないでね?」
「大人しくしてたらな」
そう言ってあたしの左手を掴んだ優音は、幹部部屋に着くなり消毒してくれた。
その消毒がまた乱暴で。
「優!!もっと!もっと優しくして!!痛い痛い痛い!!」
傷口にコットンをグリグリと押し付ける優音に、「タンマタンマ!」とソファーをバシバシ叩く。