Ri.Night Ⅲ
賢くんは慧くんの二つ上のお兄ちゃんで、貴兄達の一つ前の獅鷹の幹部だった人。
普段はおちゃらけてて楽しいけど、実は頭が良くて頼りになる。
でも、どちらかと言えば賢くんより慧くんの方がお兄ちゃんっぽいかな。
確か賢くんは高校卒業後、有名大学に進学したって聞いたけど、何で此処に居るんだろう?
『さっきまで倉庫に居たんだ』
バックミラー越しにそう教えてくれた賢くん。
どうやら顔に出ていたらしい。
『……そうだったんだ。大学は?』
『今テスト中だから昼間で終わり』
『そうなんだぁ……流石賢くん』
テスト勉強しなくていいだね。
『流石って何だよ』
ミラーに映る賢くんの笑顔に壱さんの優しい笑顔を思い出して、曖昧に笑い返した。
そう言えば、車に乗ってた時の壱さんとの会話っていつもミラー越しだったな……。
浮かんでくるのは、最後に見たみんなの表情。
そして、頭の中で何回もリピートされる最後の言葉。
離れたのは自分。
引き止めてくれたみんなを突き放したのも自分。
自分で決めて離れたのに、どうしてこんなに胸が苦しくなるんだろう……。
『凛音』
『……ん?』
『疲れただろ?着いたら起こしてやる。寝てろ』
そっと側頭部を引き寄せられて、左肩に寄り掛からされる。
そのままの状態で頭を優しく撫でくれる貴兄に涙が溢れそうになって、「うん」と返事した後、貴兄の肩口に顔を埋めて目を瞑った。