Ri.Night Ⅲ
「貴兄!!」
前方から迫り来る敵に優音が声を張り上げて次の指示を求める。
けど、貴兄は何も答えなかった。
いや、答えられなかったんだ。
この先に逃げ道がないのを知っているから。
この道は一本道で、左側が公園、右側は工場になっている。
曲がり角なんて一つもない。
「貴兄……」
こうしてる間にも敵が近付いている。
どうすれば……。
「公園に入って反対側に抜けるぞ!!」
貴兄はそう叫ぶと、スピードを落として公園の中へと入った。
細道を抜け、広場に入った時。
「クソッ!ハメられた!!」
貴兄の悔しそうな叫び声と共にバイクが急停止した。
……ハメられた?
貴兄の身体をグイッと押し退けると、目に飛び込んできたのはガラの悪い数十人の男達の姿で。
その光景を見て貴兄の言った意味が分かった。
さっきのバイクは此処に誘導する為の罠だったのだと。