Ri.Night Ⅲ
「なっ……!?」
「リン!!」
「……っ、リン!!」
まさか二人を放ってあたしの方へ来るとは思ってなかったのだろう。
貴兄と優音が振り返ってあたしを呼ぶ。
けど、それに返事する暇もなく走ってきた男があたしの顔目掛けて拳を繰り出してきた。
それを後ろへ身体を反らして避け、足を踏ん張って体勢を整える。
「くっ……!」
トンッと地面を蹴って後方に跳ぶと、同じように跳んできた男。
振り上げられた腕に狙いを定め、男の懐に忍び込んでその腕を下から掴んだ。
と同時に、思いきり振り下ろし、背負い投げする。
「くっ……!」
砂地に叩きつけられた男は地面へと転がり、仰向けに。
その姿を目で追いながら、ゆっくりと数歩後ろへと下がった。
………っ、なるほど。
無理矢理喧嘩に参戦しろって事ね。
どうやらあたしは見学させて貰えないらしい。
貴兄に待ってろと言われたけど、向かってくるものは仕方ない。
やらなければやられるのだから。
「ククッ……」
地面に転がっていた男はいきなり笑い出したかと思うと、のっそりと立ち上がってニヤリと妖しく微笑んだ。
……なに?
クイッと顎で右方を指し、いきなりその方向へと走り出した男。
『待てっ!!』
条件反射と言うのだろうか。
あたしは逃げる男を追い掛けた。