Ri.Night Ⅲ
────…
『じゃあまた連絡する』
『あぁ。待ってる』
微かに聞こえてきた声に、意識がはっきりしないままゆっくりと目を開けた。
ちょうどその時聞こえてきたのは、ドアが閉まるような音と車の発進する音。
『貴、兄……?』
その大きな音に虚ろだった意識がハッキリしてきた。
……と同時に、今の自分の体勢に驚いた。
『凛音、起きたのか?』
『た、貴兄下ろして!』
『暴れたら落ちるぞ』
無視してお姫様抱っこしたまま歩き出す貴兄に仕方なく口を噤んで、玄関に着くのを待つ。
けど。
『た、貴兄もう良いってば!』
玄関で下ろされるかと思っていたら、その状態のまま後ろに居た優音に靴を脱がされて。
見事な連携プレイにあたしは何も言えず、ただ下ろされるのを待つ事しか出来なかった。
『ちょっと待ってろ』
ソファーにあたしを下ろし、ポンッと頭に手を乗せてキッチンへと歩いていく貴兄。
入れ替わるようにやって来た優音が、あたしの隣に腰を下ろして背凭れに深く凭れた。
『ほら』
貴兄からコップ差し出されて、「ありがと」と言って受け取る。
一口口に含むと、冷たいアイスコーヒーが口一杯に広がって、ちょうど良い甘さのコーヒーに「はぁ」と溜め息が零れ落ちた。
『……ねぇ、貴兄。パパとママ、いつ帰ってくるの?』
二人の姿が見当たらないという事はまだ帰って来てないのかな?
それともあの二人の事だから帰って来て早々デートでもしてるんだろうか。
『二人は帰って来ない』
『………え?』
今、なんて?
予想外の返答に、目を見開いて貴兄を見る。