Ri.Night Ⅲ
この時、俺はいきなり現れた二台のバイクのせいで“凛音”という存在を忘れていた。
それぐらいこのバイクの登場は強烈だったから。
と言うより、凛音とこのバイクとの接点が結びつかなかったからかもしれない。
「アイツ等、誰だよ?」
陽が怪訝な顔でそう呟く。
その問いかけには誰も答えなかった。
というか答えられなかった。
そんな事、俺が聞きたい。
アイツ等は何者なのか。
あの集団は何者なのか。
一体これから何が始まるのか。
聞きたい事は山程ある。
「──オイ、奴等がバイクから降りたぞ」
彼方の声に半分飛んでいた意識が戻った。
前方を見れば、彼方の言った通り、バイクに跨がっていた奴等がバイクから降りていた。
これから喧嘩でも始めるのか?
向き合っている奴等を見て顔を顰める。
俺等達には何がどうなっているのかサッパリ分からなかった。
此処からじゃアイツ等の会話は全く聞こえないし、それどころか顔もハッキリと見えない。
何となくシルエットが分かるぐらいだ。
「……凛音」
奴等をジッと見ていると、隣に居た十夜がぼそりと何かを呟いた。
「十夜?」
「凛音……」
「は?」
何だって……?
十夜が発した言葉に一瞬耳を疑った。
“凛音”
十夜は今、“凛音”って言ったのか?
そんなまさか───