Ri.Night Ⅲ
「……なぁ、俺、あの喧嘩スタイルどっかで──」
そう彼方が呟いた時、俺達は凛音に向かって走り出す一人の男を捉えた。
「凛音!」
「凛音ちゃん!!」
駄目だ。間に合わない!!
距離を詰めた男の拳が凛音に向かって振り下ろされる。
けど、凛音は寸前の所で交わし、トンッと後ろへ跳んで距離を取った。
だが、逃がさないとでも言うように食らいついていく男。
再び頭上から拳を振り下ろそうとする男の懐に素早く忍び込んだ凛音は、腕を取ってそのまま一本背負いした。
凛音に投げ飛ばされ、地面に仰向けに転がる男。
まさに一瞬とも呼べる出来事に、俺達はその場から一歩も動く事が出来なかった。
「嘘だろ……」
今の一戦で気付いてしまった。
あそこに居るのは“凛音”だと。
「アイツ、立ち上がったぞ。どうする!?」
のっそりと立ち上がった男を見て、顔を見合わせる俺達。
もし、まだ凛音に手を出そうと言うのなら行くしかない。
アイツと一緒に居た二人の男は今喧嘩真っ最中で凛音の元へは行けそうにないから。
「行くしかねぇだろ」
いつでも飛び出せるよう、立ち上がった男を見据える。
けれど、次の瞬間、男は思いもよらぬ行動に出た。
「アイツ!!」
突然違う方向へと走り出した男。
逃げ出したのならそれでいいと思ったが、何を思ったのか凛音がその男を追い掛けようと走り出した。
「……チッ、あの馬鹿!!」
何追い掛けてんだよ!!
「行くぞ」
俺の背後を走り抜けていく十夜。
俺逹も十夜の後を追い、走り出す。
生い茂る木々の隙間をかいくぐり、凛音が走っていった大通りを目指す。
……チッ、思うように進まねぇ。
大通りまではそんなに距離はない筈なのに、何故か遠く感じる。
それは木々を通り抜けて思うように進めないからか、それとも身体が早まる気持ちについていっていないのか。
どちらにしても焦っている俺逹には長い道のりに感じた。