Ri.Night Ⅲ
「りっちゃん!!」
左方から彼方に呼ばれて、振り向く。
すると、数十メートル先に彼方が居て、彼方は目が合うなりこっちに向かって走ってきた。
……っ、逃げなきゃ……!捕まってしまう!!
けど、何処へ?
焦る気持ちを抑え、周囲を見回して逃げ道を探すけれど、前は行き止まり、左は彼方、後ろは十夜達。
残る道は右しかない。
「りっちゃん!!」
近付いて来ている彼方を無視し、右に向かって走り出す。
……彼方、ごめん。
あたし、どうしても捕まれないの。
今捕まったらまた……。
そう思った時だった。
なっ……!?
脇道から現れた手にガシッと右腕を掴まれて、無理矢理足を止められた。
突然加えられた力にバランスが崩れ、身体が右へと傾いていく。
「………っ!」
それは本当に一瞬の出来事で。
倒れていく身体をどうすることも出来ず、ギュッと強く目を瞑った。
けれど、倒れると思っていた身体は誰かに受け止められ、そのまま包み込むように強く抱き締められた。
「──凛音」
「………っ」
耳元で囁くように呼ばれたのは、あたしの名前。
その低くて甘い声に心臓がドクンと激しく波打った。