Ri.Night Ⅲ
……とお、や?
……っ、十夜、十夜、十夜……!!
十夜の背中に両手を回して、ギュッと服を握り締める。
久し振りに感じた十夜の温もりと匂いに、あたしは今の自分の状況を完全に忘れてしまっていた。
“捕まったら駄目”という事なんか頭から吹っ飛んで、ただ、十夜に抱き締められたという事だけが頭の中を支配する。
もう、何も考えられない。
「彼方!!凛音は!?」
「……っ!」
すぐ近くで聞こえた煌の声にハッと意識が戻って。
駄目っ!!
ドンッと思いっきり十夜を突き飛ばした。
「……っ」
「……あ」
突き飛ばした瞬間目に入ったのは、驚愕と哀しみが入り混じった十夜の顔。
その表情にズキッと胸が痛んで、一歩、足が後ずさった。
あ、あたし……。
「十夜!!」
「りっちゃん!!」
「………っ」
横道から姿を現した四人を視界に捉え、急いで逆方向へと走り出す。
「りっちゃん!!」
「凛音!!」
「凛音ちゃん!!」
「十夜!!お前何してんだよ!?何でアイツを捕まえねぇんだよ!!」
背後から聞こえる煌のその言葉に、どうしようもない後悔があたしを襲った。
……十夜、ごめんなさい。
突き飛ばしてごめんなさい。
そんな顔、させるつもりはなかったの。
傷つけるつもりなんてなかった。
ごめん。ごめんね。
皆の声を背に受けながら、あたしはひたすら夜道を走った。