Ri.Night Ⅲ
────…
「……っ、ハァ、ハァ……ッ」
……もう、追ってきてない?
キョロキョロと周りを見渡して、誰も居ないか確認する。
此処から見る限り、周囲には誰も見当たらない。
どうやら上手く撒けたみたいだ。
ホッと安堵の溜め息をついて、一本の木に寄り添うように近付いて行く。
そっと木に触れ、乱れた息を何とか沈めようと深呼吸を繰り返した。
「ハァ………」
数分経つと、呼吸も正常に戻ってきて、落ち着いてきた。
けど、その代わりに浮かんだのは、突き飛ばした時の十夜の顔。
目を瞑ると、その表情がハッキリと焼き付いていて、胸の奥が痛いぐらい締め付けられる。
“何で?”
“どうして?”
聞きたい事は沢山あるのに、彼等からは直接聞くことが出来ない。
だって、皆とは逢えない。逢っちゃいけない。
そう思えば思うほど、逢いたくてたまらなくなるのは何故なんだろう。
さっき感じた温もりをもう一度感じたくて、もう一度触れたくて堪らなくなる。
逢いたいという気持ちと逢えないという気持ちがごちゃ混ぜになって、もう、自分の本当の気持ちが何なのか分からなくなっていた。