Ri.Night Ⅲ
……早く、貴兄と優音の元へ戻らなきゃ。
これ以上此処に居ると気持ちが揺らいでしまいそうでコワイ。
“十夜が好き”という気持ちが溢れてしまいそうでコワイ。
胸元をギュッと握り締めて、そっと顔を伏せる。
……泣いちゃ駄目だ。
そう自分に言い聞かせるように、何度も何度も心の中で呟く。
それがいけなかったのかもしれない。
「───凛音」
あたしは、背後に迫っている気配に全く気付いていなかった。
「………っ」
突然背後から現れた手が、木に添えてあったあたしの右手にそっと被さる。
それを目で捉えたあたしは、声を出すよりも先に右手を引っ込めようとした。
けど、その手はまるで木に固定されているかのように握りし締められていて全く動かない。
……っ、なんで?
なんで十夜が……。
そう。
突然背後から現れたのは、さっきあたしが突き飛ばした十夜だった。
なんで、十夜が此処に居るの?
さっき、十夜を傷付けたんだよ?
それなのになんで……。
「凛音」
「………っ」
さっきよりもさらに近くに感じる十夜の囁きにギュッと目を瞑って身を縮めた。
「……俺から、逃げるな」
そう言われたかと思ったら包まれていた手をギュッと握り締められて、更に身体が強ばる。
……十夜のこんな弱々しい声、初めて聞いたかもしれない。
普段の十夜からは考えられない程弱々しい声に、あたしはさっき自分がしてしまった行動を改めて後悔した。
……どうして。どうしてあたしは人を傷付ける事しか出来ないのだろう。
どうして大切な人達を傷付ける事しか出来ないのだろう。
もう、嫌だ。