Ri.Night Ⅲ
溢れる涙を必死に堪え、唇を強く噛み締めて何度も何度も心の中で謝罪する。
本当は声に出して謝りたい。
けど、いくら謝っても十夜の言葉には応えられない。
逃げるなと言われても、それに対してあたしは頷く事が出来ないんだ。
十夜達がどうやってあたしを見つけたのかは分からないけど、此処に居るという事はあたしを迎えに来てくれたという事だろう。
だったら尚更頷けない。
あたしは皆の元へは帰れないのだから。
「凛音──」
「十夜!!」
背後から聞こえてきた十夜の煌の息切れ混じりの声に、あぁ、もう逃げられないか、と心の中で落胆する。
この状況だ。
もうどうにもならないって事ぐらい馬鹿なあたしでも分かる。
「十夜!凛音は!?」
真後ろで止まった複数の足音。
四人の乱れた息がサワサワと揺れる木々の音に重なってその場に響く。
「凛音は此処に居る」
そう言った十夜は握り締めていたあたしの手を掴み直して、右手首を隙間がないぐらい強く握り締めた。
そして、自分の方へと引っ張る。
「凛音!!」
それによって皆の前に晒されたあたしの姿。
「凛音ちゃん……」
「……りっちゃん」
ポツリと頭上に落ちてきた壱さんと彼方の声に、あたしは頭を伏せたまま何の反応も出来なかった。
皆から逃げたのに顔なんて上げられない。
「──馬鹿が。逃げてんじゃねーよ」
煌の呆れた声が落ちてきて、ニセモノの髪の毛をグシャグシャと掻き回される。
「……っ」
いつもならその仕種に怒ってるけど、今はそれが逆に涙を誘った。