Ri.Night Ⅲ
何でそんなに優しいの?
あたし、“あの時”皆に何も言わずに去ったんだよ?
自分勝手だって怒ってもいい筈なのに。
それに、さっきだってあたしは皆の顔を見た瞬間逃げ出した。
それなのに皆はあたしを追い掛けて来てくれた。
“こんな格好”をしているあたしを。
けど。
それでもあたしは自分の事しか考えてないんだ。
どんなに申し訳ないと思っていても、本当の事を皆に話す勇気なんてない。
本当に最低な奴だ。
あたしは弱い。
こんな風に優しくされるだけで固まっていた決心がグラグラと簡単に揺らいでしまう。
皆と一緒になんて行ける訳がないのに。
“もしかしたら”
なんて、そんな有り得ないことを期待する。
一緒に行けないと分かっているのに。
「凛音」
頭上で動いていた手が、ピタッと止まって。
「お前に、聞きたい事が山程ある」
「………っ」
煌のその言葉に、心臓がドクンと大きくとび跳ねた。
「取り敢えず話は倉庫に帰ってからだ」
その言葉に俯いていた顔が勢いよく上がって、あたしを見下ろしていた煌と至近距離で目が合った。
真剣な表情であたしを見下ろしている煌にグッと言葉が詰まる。
「お前に拒否権はねぇ」
そう言うと、煌はあたしの頭から手を離して十夜へと視線を移した。
目が合うなりコクンと頷いた二人。
「……っ、十夜!」
十夜は頷いたかと思うと、あたしの腕を引いて歩き出した。