まさかの婚活
まさかの御曹司 2
「結婚って……」
「僕は今まで母さんに何一つ逆らった事はなかったはずだ。でも、これだけは譲れない。碧と結婚するから。もし認めてもらえないのなら家を出る覚悟だから」
とても穏やかに蓮は一生の重大事をさらっとお母さまに宣言した。
「蓮、あなた……」
美しいお母さまは狼狽えるばかり……。
「きょうは学校も休みだし、もう予定は何もないよね?」
いつもの笑顔にもどった蓮はソファーから立ち上がりながら聞いた。
「えぇ……」
「出かけて来るよ。今夜は帰らないから。碧、行くよ」
悪戯っぽい顔で私に笑い掛けて歩き出す。
「ええっ? お邪魔しました。失礼致します」
ドアから出て私は振り向き、言葉もないお母さまに丁寧にお辞儀をして、中世ヨーロッパの校長室を後にした。
お休みの静かな学園の廊下を通りエレベーターで降りて……。
蓮は私の手を取って外に連れ出した。
「あぁ~っ!! スッキリした」
って笑ってる。
「笑い事じゃあないわよ。どういうつもりなのよ」
まだドキドキしてる……。
「だから、碧と結婚するつもりだよ」
「私、まだ返事してないわよ」
そう。してないと自分に言い聞かす。
「断るつもり?」
「えっ?」
その自信はどこから来るのと聞きたい。
「半年も一緒に居て、碧の気持ち分からないと思う?」
「私の気持ちって、自分でもよく分からないのに、どうして蓮には分かるのよ」
「分かるよ。半年間、碧だけを見て来たんだから」
「…………」
何も言えなかった。
「さぁ、出かけるよ。乗って」
近くに止めてあった車の助手席のドアを開けて微笑んでる蓮。
「どこへ行くの?」
ちょっと不安な私。
「さぁ、どこにしようか」
蓮は笑顔。
二人で車に乗って出かけるなんて初めて。エンジンをかけて車は走り出した。
「これ、蓮の車?」
「そうだよ」
車には、まったく詳しくない免許すら持ってない私にも、この車がその辺を普通に走ってる車よりは随分とお高いお値段が付いているものだという事くらいは分かる。
あっという間に賑やか過ぎる街を抜けて、うららかな春の陽射しを充分浴びて、キラキラ光る青い海の見える丘の上に車を停めた。
ゴールデンウィーク一日目だというのに、この静けさは何?
「静かねぇ」
「だろう。昔、来た事あるんだ。ずっと昔」
「お母さんに、あんな言い方して大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。本気で家を出る覚悟だってしてる。一美容師としてでも充分生きていけるし。僕が居なくても学園は安泰だよ」
「でも、お母さんは蓮に後を継いで欲しいんでしょう?」
「あれだけ大きくなると血族だけでは無理もあるんだよ。信頼出来る人材を育てて任せるのも必要な事だと思う」
「ちゃんと考えてるんだ。知らなかった」
「ただのバカ息子だって思った?」
蓮は笑ってる。
「そうじゃないけど。青山の美容院に修行に行かされたのも外の世界を知って欲しかったからなんじゃないかな?」
「へぇ、碧には母さんの気持ちが分かるんだ」
「そうじゃないけど……。なんとなく、そう思っただけ」
「碧、きょうから三連休だよね? 僕も学校は休みだし、あと二日は一緒に居られるよ」
「明日とあさっては、お休みだけど。一緒にって……」
「いいかげん素直になったら? 僕のことが好きだって顔に書いてあるよ」
「どこに?」
まったく自信過剰なんだから……。
「ここにだよ」
え? ええっ? なに?
あっという間に蓮にキスされてた。唇が、そっと触れ合うだけのやさしいキス。蓮の唇が女の子みたいに柔らかくて……。女の子とキスしたことなんてないけど。
「ずっと碧にキスしたかった。でも居候が、そんなことしたら追い出されるだろう? だから我慢してたんだ。結構、辛かったんだからね」
そんなことを言う蓮に、どんな顔していいのか分からない。
「聞いてもいい?」
どうしても聞いておきたかった。
「なに?」
蓮はシートにもたれて私を見てる。
「どうして私なの? 私なんかの、どこがいいの?」
「碧は、そんなに自分に自信がないの?」
「ある訳ないじゃない。男はみんな若くて美人なら頭の中身なんて、どうでもいいんでしょう? 綺麗でスタイルが良ければ、連れて歩いて、みんなが振り返る美人なら満足なんでしょう?」
「本気でそう思ってるの?」
「だって……」
「碧、残業で遅くなるってメールくれた夜、残業じゃなくて合コン行ってた事あったでしょう?」
「えっ? 何で知ってるの?」
「碧が帰ってからシャワー浴びてる間にメールがいくつも来てたからさ」
「メールって?」
「今度、二人だけで会ってもらえませんか? 今夜は二十三歳コンビに仕切られて、あまり話せなかったから。あなたをもっと知りたい。とか何とかってメールが、いつも来るから」
「そんなメール見てないわよ」
「ごめんなさい。実は好きな人が居て。今夜は、あの二人に数合わせで誘われたから彼女たちを誘ってあげてくださいってメール返しといたから」
「で、そのまま削除したの?」
「正解!」
「蓮、あなたって人は……。勝手に人のスマホ見て勝手にそんなメール返して。どういうつもりよ」
「碧は合コンで知り合った奴と付き合う気だったの?」
「そんなこと考えてないわよ」
「じゃあ、いいでしょう? 削除しても構わないよね」
「信じられない。どうしてそんな事が平気で出来るの?」
「僕は今まで母さんに何一つ逆らった事はなかったはずだ。でも、これだけは譲れない。碧と結婚するから。もし認めてもらえないのなら家を出る覚悟だから」
とても穏やかに蓮は一生の重大事をさらっとお母さまに宣言した。
「蓮、あなた……」
美しいお母さまは狼狽えるばかり……。
「きょうは学校も休みだし、もう予定は何もないよね?」
いつもの笑顔にもどった蓮はソファーから立ち上がりながら聞いた。
「えぇ……」
「出かけて来るよ。今夜は帰らないから。碧、行くよ」
悪戯っぽい顔で私に笑い掛けて歩き出す。
「ええっ? お邪魔しました。失礼致します」
ドアから出て私は振り向き、言葉もないお母さまに丁寧にお辞儀をして、中世ヨーロッパの校長室を後にした。
お休みの静かな学園の廊下を通りエレベーターで降りて……。
蓮は私の手を取って外に連れ出した。
「あぁ~っ!! スッキリした」
って笑ってる。
「笑い事じゃあないわよ。どういうつもりなのよ」
まだドキドキしてる……。
「だから、碧と結婚するつもりだよ」
「私、まだ返事してないわよ」
そう。してないと自分に言い聞かす。
「断るつもり?」
「えっ?」
その自信はどこから来るのと聞きたい。
「半年も一緒に居て、碧の気持ち分からないと思う?」
「私の気持ちって、自分でもよく分からないのに、どうして蓮には分かるのよ」
「分かるよ。半年間、碧だけを見て来たんだから」
「…………」
何も言えなかった。
「さぁ、出かけるよ。乗って」
近くに止めてあった車の助手席のドアを開けて微笑んでる蓮。
「どこへ行くの?」
ちょっと不安な私。
「さぁ、どこにしようか」
蓮は笑顔。
二人で車に乗って出かけるなんて初めて。エンジンをかけて車は走り出した。
「これ、蓮の車?」
「そうだよ」
車には、まったく詳しくない免許すら持ってない私にも、この車がその辺を普通に走ってる車よりは随分とお高いお値段が付いているものだという事くらいは分かる。
あっという間に賑やか過ぎる街を抜けて、うららかな春の陽射しを充分浴びて、キラキラ光る青い海の見える丘の上に車を停めた。
ゴールデンウィーク一日目だというのに、この静けさは何?
「静かねぇ」
「だろう。昔、来た事あるんだ。ずっと昔」
「お母さんに、あんな言い方して大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。本気で家を出る覚悟だってしてる。一美容師としてでも充分生きていけるし。僕が居なくても学園は安泰だよ」
「でも、お母さんは蓮に後を継いで欲しいんでしょう?」
「あれだけ大きくなると血族だけでは無理もあるんだよ。信頼出来る人材を育てて任せるのも必要な事だと思う」
「ちゃんと考えてるんだ。知らなかった」
「ただのバカ息子だって思った?」
蓮は笑ってる。
「そうじゃないけど。青山の美容院に修行に行かされたのも外の世界を知って欲しかったからなんじゃないかな?」
「へぇ、碧には母さんの気持ちが分かるんだ」
「そうじゃないけど……。なんとなく、そう思っただけ」
「碧、きょうから三連休だよね? 僕も学校は休みだし、あと二日は一緒に居られるよ」
「明日とあさっては、お休みだけど。一緒にって……」
「いいかげん素直になったら? 僕のことが好きだって顔に書いてあるよ」
「どこに?」
まったく自信過剰なんだから……。
「ここにだよ」
え? ええっ? なに?
あっという間に蓮にキスされてた。唇が、そっと触れ合うだけのやさしいキス。蓮の唇が女の子みたいに柔らかくて……。女の子とキスしたことなんてないけど。
「ずっと碧にキスしたかった。でも居候が、そんなことしたら追い出されるだろう? だから我慢してたんだ。結構、辛かったんだからね」
そんなことを言う蓮に、どんな顔していいのか分からない。
「聞いてもいい?」
どうしても聞いておきたかった。
「なに?」
蓮はシートにもたれて私を見てる。
「どうして私なの? 私なんかの、どこがいいの?」
「碧は、そんなに自分に自信がないの?」
「ある訳ないじゃない。男はみんな若くて美人なら頭の中身なんて、どうでもいいんでしょう? 綺麗でスタイルが良ければ、連れて歩いて、みんなが振り返る美人なら満足なんでしょう?」
「本気でそう思ってるの?」
「だって……」
「碧、残業で遅くなるってメールくれた夜、残業じゃなくて合コン行ってた事あったでしょう?」
「えっ? 何で知ってるの?」
「碧が帰ってからシャワー浴びてる間にメールがいくつも来てたからさ」
「メールって?」
「今度、二人だけで会ってもらえませんか? 今夜は二十三歳コンビに仕切られて、あまり話せなかったから。あなたをもっと知りたい。とか何とかってメールが、いつも来るから」
「そんなメール見てないわよ」
「ごめんなさい。実は好きな人が居て。今夜は、あの二人に数合わせで誘われたから彼女たちを誘ってあげてくださいってメール返しといたから」
「で、そのまま削除したの?」
「正解!」
「蓮、あなたって人は……。勝手に人のスマホ見て勝手にそんなメール返して。どういうつもりよ」
「碧は合コンで知り合った奴と付き合う気だったの?」
「そんなこと考えてないわよ」
「じゃあ、いいでしょう? 削除しても構わないよね」
「信じられない。どうしてそんな事が平気で出来るの?」