まさかの婚活
まさかの御曹司 3
「碧を愛してるから、僕だけのもので居て欲しいから。碧に言い寄る他の男なんて、みんな僕が削除するよ」
まったく一途なのか我が儘なのか理解の範疇を超えてるよ。蓮は……。
正直なところ少し呆れてる。ううん。大いに呆れて驚いてるけど……。
「もう二度と勝手に人のスマホ見ないで。約束して」
言うべきことは、キチンと言っておかないといけない。小さなことを一つ一つ我慢していたら、きっといつかため込んだ気持ちを自分自身がコントロール出来なくなって爆発する。そう思ったから……。
「ごめん。もうしないよ。約束する。でも碧も約束して。二度と合コンには行かないって」
「あれは受付の二十三歳コンビに人数足りないから本当に数合わせで仕方なく二回行っただけよ」
「でも二回共アドレス教えたんでしょう?」
「帰り際に教えてって言われたから……。別に大した意味はないわよ」
「でも二人だけで会いたいってメールだったよ。碧は男が大切に付き合いたいって思う魅力が自分にあること全然気付いてないんだよ」
「私が? 嘘でしょう? 昔からモテた記憶なんてないわよ」
瞬間これまでの経験をすべて思い出してみる。でも……。ないものはない。
「だから、碧は自分が分かってないの」
そんなことを言われても……。記憶も経験も何もかも引っ張り出しても分からないものは、どう頑張っても分かるはずなどない。
「もう合コンも行かないしアドレスも教えない。それでいいんでしょう?」
「分かってくれれば、それでいいよ」
蓮と結婚なんかしようものなら二十四時間、監視が付きそうな気がするわ……。
本当に蓮と私、結婚するの?
半年前に戻って居候させるの断れば良かったのかな? とにかく大変な王子さまだった訳だし……。
帰る豪邸があった王子を何で置いてあげたりしたんだろう。もちろん知っていたら追い出してた。絶対に。後悔先に立たずだなぁ。私がそんなことを考えてるのを知ってか知らずか……。
「さぁ、行こうか」
「えっ? どこへ?」
「泊まるところを探さないといけないだろう。この近くに家の別荘があるんだ。管理人のおじさんに頼めば泊まれると思うけど……。行ってみようか?」
蓮は車を走らせて別荘の管理人さんの家に着いた。温かな笑顔で迎えてくれた七十代くらいの素朴な人柄がすべてに表れているような素敵なおじさんは
「実は、お兄様から泊まれないかと連絡があったんですが、暖房が壊れてましてね。修理が連休明けになるそうです。給湯器は使えるので、お湯は出ますが、ここらは朝晩冷え込みますので、お泊りにはどうかと……」
「じゃあ、家の家族は来ないんですね? 暖炉ありましたよね? 使えませんか?」
「蓮おぼっちゃまの頼みですからね。分かりました。薪を持って行きますから。それでいいですか?」
「ありがとう。おじさん、助かります。それから僕がここに居ることは……」
「分かりました。私は何も知らない事にしておきますよ」
まるで久しぶりに会う孫を見るような優しい笑顔を見せていた。
別荘の鍵をもらって、そのまま町まで買い物に行った。食料や飲み物、着替え、必要なものをしっかり買い込んで別荘に着くとおじさんは充分過ぎる程の薪を運んでくれていた。
「これだけあれば二日は泊まれるよ。さぁ、食事の支度。その前に着替えないとね。碧、ここの部屋使って。僕はその隣り」
「うん。じゃあ着替えてくるから」
二人共スーツ姿。仕事着のままで来ちゃったから……。
蓮に言われて入った部屋。ここが別荘のゲストルームなのね。他にも部屋はいくつもあった。セミダブルのベッドとテーブルとイスが二つ。小さめのドレッサーもクローゼットも、ちゃんとある。シティホテル並みの設備は整ってる。
さっき買って来たばかりのスウェットとロングスカート。夜は冷えるって聞いたから厚手のソックスも。着替え終わって部屋を出ると蓮がキッチンで、もう何かを作っていた。
「何を作ってるの?」
「今夜は簡単なものにしようと思って。カルボナーラとサラダだよ。碧、好きだろう?」
「何か手伝う事ある?」
「じゃあ、お皿、出してくれる? そこの食器棚にあるから」
「分かった。う~ん、このお皿でいい?」
大きな食器棚の前で適当なものを探して見付けたのは、白に銀の縁取りの大き目のお皿。
「うん。それでいいよ。持って来て」
クリーミーで美味しそうな香りが辺りに漂っている。手際も良いし……。蓮は本当に料理上手。
「ねぇ、蓮。私、料理全然得意じゃないわよ。私と結婚したって美味しいものなんて食べられないよ」
「碧に料理作ってもらうために結婚するんじゃないよ。料理なんて簡単なもんだよ。碧が作れないなら僕が作るから」
「でも、それじゃあ蓮が結婚する意味があるの?」
「料理や掃除や洗濯は出来る方がすればいい。僕は碧を家に閉じ込めておく気はないから。仕事も続ければいいし自由にしてていいんだよ」
「それって最悪のお嫁さんよね。何も出来ないなんて……」
言いながら少なからず自己嫌悪……。
「嫁さんをもらうって考え方が古いんだよ。碧のお母さんも教師続けてるんだろう?」
「そうだけど父は何もしないから……。母は仕事から帰って全部一人で家事してるわ」
亭主関白の見本みたいな父を思い出していた。
「そうか。碧のお母さんは大変なんだね。体、壊さなければいいけど……」
「ずっとそうだったから、もう慣れっこなんでしょう」
今更ながら母は偉大な人なんだと思い返していた。なんて親不孝な娘なんだろう私は……。
「さぁ、出来た。食べよう。あっ碧、食器棚の引き出しにフォークがあるから出してくれる?」
二人でテーブルに向かい合って座った。自然な木目の風合いが生かされた重厚な一枚板のテーブル。
「いただきます」
出来たてのカルボナーラ。蓮の料理は、やっぱり美味しい。
「すごく美味しい」
「そう? 僕が家へ帰ってから食事どうしてたの?」
サラダを取り分けながら蓮が聞いた。
「う~ん、コンビニのお弁当とか……。だって一人分なんて材料買っても余るだけなんだもの」
「碧らしいよね」
そう言って蓮は笑った。
「家の母さんも料理はしなかったよ。仕事が忙しくてね。いつも、お手伝いさんが美味しい料理を作ってくれた。僕にとって、おふくろの味は、お手伝いさんの味なんだ」
まったく一途なのか我が儘なのか理解の範疇を超えてるよ。蓮は……。
正直なところ少し呆れてる。ううん。大いに呆れて驚いてるけど……。
「もう二度と勝手に人のスマホ見ないで。約束して」
言うべきことは、キチンと言っておかないといけない。小さなことを一つ一つ我慢していたら、きっといつかため込んだ気持ちを自分自身がコントロール出来なくなって爆発する。そう思ったから……。
「ごめん。もうしないよ。約束する。でも碧も約束して。二度と合コンには行かないって」
「あれは受付の二十三歳コンビに人数足りないから本当に数合わせで仕方なく二回行っただけよ」
「でも二回共アドレス教えたんでしょう?」
「帰り際に教えてって言われたから……。別に大した意味はないわよ」
「でも二人だけで会いたいってメールだったよ。碧は男が大切に付き合いたいって思う魅力が自分にあること全然気付いてないんだよ」
「私が? 嘘でしょう? 昔からモテた記憶なんてないわよ」
瞬間これまでの経験をすべて思い出してみる。でも……。ないものはない。
「だから、碧は自分が分かってないの」
そんなことを言われても……。記憶も経験も何もかも引っ張り出しても分からないものは、どう頑張っても分かるはずなどない。
「もう合コンも行かないしアドレスも教えない。それでいいんでしょう?」
「分かってくれれば、それでいいよ」
蓮と結婚なんかしようものなら二十四時間、監視が付きそうな気がするわ……。
本当に蓮と私、結婚するの?
半年前に戻って居候させるの断れば良かったのかな? とにかく大変な王子さまだった訳だし……。
帰る豪邸があった王子を何で置いてあげたりしたんだろう。もちろん知っていたら追い出してた。絶対に。後悔先に立たずだなぁ。私がそんなことを考えてるのを知ってか知らずか……。
「さぁ、行こうか」
「えっ? どこへ?」
「泊まるところを探さないといけないだろう。この近くに家の別荘があるんだ。管理人のおじさんに頼めば泊まれると思うけど……。行ってみようか?」
蓮は車を走らせて別荘の管理人さんの家に着いた。温かな笑顔で迎えてくれた七十代くらいの素朴な人柄がすべてに表れているような素敵なおじさんは
「実は、お兄様から泊まれないかと連絡があったんですが、暖房が壊れてましてね。修理が連休明けになるそうです。給湯器は使えるので、お湯は出ますが、ここらは朝晩冷え込みますので、お泊りにはどうかと……」
「じゃあ、家の家族は来ないんですね? 暖炉ありましたよね? 使えませんか?」
「蓮おぼっちゃまの頼みですからね。分かりました。薪を持って行きますから。それでいいですか?」
「ありがとう。おじさん、助かります。それから僕がここに居ることは……」
「分かりました。私は何も知らない事にしておきますよ」
まるで久しぶりに会う孫を見るような優しい笑顔を見せていた。
別荘の鍵をもらって、そのまま町まで買い物に行った。食料や飲み物、着替え、必要なものをしっかり買い込んで別荘に着くとおじさんは充分過ぎる程の薪を運んでくれていた。
「これだけあれば二日は泊まれるよ。さぁ、食事の支度。その前に着替えないとね。碧、ここの部屋使って。僕はその隣り」
「うん。じゃあ着替えてくるから」
二人共スーツ姿。仕事着のままで来ちゃったから……。
蓮に言われて入った部屋。ここが別荘のゲストルームなのね。他にも部屋はいくつもあった。セミダブルのベッドとテーブルとイスが二つ。小さめのドレッサーもクローゼットも、ちゃんとある。シティホテル並みの設備は整ってる。
さっき買って来たばかりのスウェットとロングスカート。夜は冷えるって聞いたから厚手のソックスも。着替え終わって部屋を出ると蓮がキッチンで、もう何かを作っていた。
「何を作ってるの?」
「今夜は簡単なものにしようと思って。カルボナーラとサラダだよ。碧、好きだろう?」
「何か手伝う事ある?」
「じゃあ、お皿、出してくれる? そこの食器棚にあるから」
「分かった。う~ん、このお皿でいい?」
大きな食器棚の前で適当なものを探して見付けたのは、白に銀の縁取りの大き目のお皿。
「うん。それでいいよ。持って来て」
クリーミーで美味しそうな香りが辺りに漂っている。手際も良いし……。蓮は本当に料理上手。
「ねぇ、蓮。私、料理全然得意じゃないわよ。私と結婚したって美味しいものなんて食べられないよ」
「碧に料理作ってもらうために結婚するんじゃないよ。料理なんて簡単なもんだよ。碧が作れないなら僕が作るから」
「でも、それじゃあ蓮が結婚する意味があるの?」
「料理や掃除や洗濯は出来る方がすればいい。僕は碧を家に閉じ込めておく気はないから。仕事も続ければいいし自由にしてていいんだよ」
「それって最悪のお嫁さんよね。何も出来ないなんて……」
言いながら少なからず自己嫌悪……。
「嫁さんをもらうって考え方が古いんだよ。碧のお母さんも教師続けてるんだろう?」
「そうだけど父は何もしないから……。母は仕事から帰って全部一人で家事してるわ」
亭主関白の見本みたいな父を思い出していた。
「そうか。碧のお母さんは大変なんだね。体、壊さなければいいけど……」
「ずっとそうだったから、もう慣れっこなんでしょう」
今更ながら母は偉大な人なんだと思い返していた。なんて親不孝な娘なんだろう私は……。
「さぁ、出来た。食べよう。あっ碧、食器棚の引き出しにフォークがあるから出してくれる?」
二人でテーブルに向かい合って座った。自然な木目の風合いが生かされた重厚な一枚板のテーブル。
「いただきます」
出来たてのカルボナーラ。蓮の料理は、やっぱり美味しい。
「すごく美味しい」
「そう? 僕が家へ帰ってから食事どうしてたの?」
サラダを取り分けながら蓮が聞いた。
「う~ん、コンビニのお弁当とか……。だって一人分なんて材料買っても余るだけなんだもの」
「碧らしいよね」
そう言って蓮は笑った。
「家の母さんも料理はしなかったよ。仕事が忙しくてね。いつも、お手伝いさんが美味しい料理を作ってくれた。僕にとって、おふくろの味は、お手伝いさんの味なんだ」