レンタルな関係。【番外編】
3.流川編「契約成立日」
「ま、これで良かったんだよな」
駅近くのファミレス。
ぬるくてまずいブラックコーヒーを啜りながら眺める窓の外。
さっきまでの雨は上がっている。
車のヘッドライトが窓ガラスの水滴に滲みながら、一台、また一台と通り過ぎていく。
本日4杯目のコーヒーだ。
まずくてかなわねぇ。
「しかしあのオンナ、俺を変質者に間違えるとはな」
まあ、俺の近寄り方も悪かったとは思うのだが。
『わ、私なんて襲っても、全然面白くないですからっ』
『む、胸は小さいし、襲い甲斐、無いですからっ』
「…ふ」
サイズ確認済みだ。
んなこと分かってるつーの。
っていうか、変質者にそんなこと暴露すんなってーの。
余計に興味が沸くだろ。
「まさか泣き出すとはな」
別に驚かそうとして腕をつかんだわけではないんだが。
あんなにびしょぬれになって。
ちゃんとシャワー浴びただろうか。
バスタオルで少々搾り出してやったが…
「男に免疫なさすぎだ、アイツ」
ぼさぼさ頭を整えてやれば、真っ赤な顔しやがって。
「しかし…」
変質者が現れるかもしれねぇって夜に、一人で歩くか、普通?
腹減ったからって理由も…
一晩くらい我慢しろってーの。
つかんでたのが俺じゃなかったら、どうしてたんだ、アイツ。
いくら「胸がちっちぇ」ことを宣言したって、
男なんて引かねぇぞ、バカが。
「危なっかしいオンナだな」
一人じゃ何もできないタイプだろうな。
ひと言ひと言への反応も大袈裟すぎる。
よくあれで今まで生きてきたもんだ。
まあ今は、要がいるから何とかなってるんだろうけどな。