レンタルな関係。【番外編】
4.唯衣編「免許と煮玉子」
「私、とりあえず運転免許取るからっ!」
「は?」
「運転免許、取るから! とりあえず」
「…とりあえずって」
「自分のチカラで!」
「…他人が取った免許がお前のものになるわけないからな。それは当たり前だろ」
「うん!」
「…まあ、卒業までに取れるようにせいぜい頑張れよ」
「うん!…って。もっと早く取れるって!」
「どうだかな」
どうも流川は、私の免許取得は無理とか思ってるらしい。
くそっ。
絶対、取ってやるっ。
卒業までって。
そんなにかかんないんだからっ。
誰のために…
…って、その辺はまぁいっか。
大学の授業が再開されてすぐに、
私は教習所通いを始めた。
もうハタチだし。
運転免許くらい持っておきたいし。
ひとつくらい、自分のチカラで何かを成し遂げたかったし。
それに。
理由はもうひとつ。
流川に、お礼がしたかったから。
皆で行った旅行のときも、流川、あんまりゆっくりできなかったみたいだし。
運転も、ほぼ流川がやってたし。
麻紀には…絡まれるし。
祐二君には…触られるし。
私には……
…寝れてなかったみたいだし。
何よりも、
私が前に進むきっかけをくれたし。
まぁ、なんだ、その、感謝の気持ちっていうか…
別にいいんだけどっ。
そんなことしなくてもっ。
でもね、一応。
自分の気持ちの、区切りとしても。