レンタルな関係。【番外編】
帰り道のコンビニでそれぞれ買い物して。
「ほら、やるよ」
「へ?」
「玉子のかわりだ。お前、好きだろ」
ビニール袋から流川が取り出したのは、
「あ。ケーキ」
「別腹なんだろ、こーいうの」
はい。そうです。
「わー、ありがとうっ」
だまされたみたいだけど!
コンビニのケーキごときに!
「ま、頑張って取れよ、免許」
「うん」
「卒業までにはな」
「だから…そんなにかかんないって。最短でとってやるって」
この~…
玉子取っちゃったり、ケーキ買ってくれたり、けなしたり…
どれに反応すればいいんだっ、私はっ。
むくれて見上げると。
流川は、ふっと笑って、私の頭を一回だけくしゃりと撫でた。
「気をつけて帰れよ」
改札をくぐって。
別々のホームにむかう。
軽く手をあげた流川の姿は、人ごみに紛れて見えなくなった。
「ふん…さっさと帰っちゃうんだもんなぁ」
ホントはもうちょっと一緒にいたい気持ちがあるけれど。
そこはぐっと我慢。
誰かに頼り始めたら、
私はまた、一人じゃ何にもできなくなっちゃう。
流川も。
口には出さないけれど、たぶん、私の気持ちを察してくれてると思う。
あれから…あのキスから、
私たちの間には何にも起こってない。
たぶん流川は。
見守ってくれてるんだと…思うんだ。
私が、ちゃんと答えを出すまで。
「頑張るよ、私」
流川に買ってもらったケーキを胸に抱いて、
私はホームへの階段を上った。