レンタルな関係。【番外編】

 結局。

 残ったのはオレだけ。

 デカ過ぎて、敬遠されたらしい。

 
 誰だよ…

 このサイズにオレを作ったの。


 それでも一時、オレブームは案外すごかったんだけどな。

 最近は、あの青いヤツに押されてダメみたいだ。

 流行りすたりって、早ぇ。




 最後まで一緒だった中サイズの仲間がいなくなってから数日後。


「じゃ、引き取っていきますねー」


 知らないスーツ服の男に引きとられ。


(お、オレもコイツの家に行くことになるのか? とうとう誰かのモノか?)


 なんて。

 期待してみたり。


 が。

 連れてこられたのは、

 このパチンコ屋。


 ダンボールに入って、ドアをくぐった途端、

 耳をつんざくような音に、ビビった。


 が、もう慣れた。


 半年もここにこうして座ってれば、慣れるわな。

 最初はオレも、景品コーナーの真ん前に居座っていたのだが、

 そのうち、棚のすみっこに追いやられた。

 
 毎日毎日、この騒音。

 見慣れた顔。

 新顔。

 まあ、こうしてダラリと過ごすっていうのも、悪くない。


 テレビも見れるしな。

 それなりに今の情勢は把握している。

 いや、一般の人間より詳しいかもしんない。

 毎日、ワイドショー見てるし。



 しかし…

 誰かに可愛がられる…っていうか、

 触ってもらえるっていうか、

 一応…

 ぬいぐるみとして生まれた以上、

 それなりの役割も果たしてみたい。


(なんてな。そんな機会、もうないかもな)


 大体、景品と交換するくらいなら、

 金に換えたほうがいいに決まってるし。


 ぬいぐるみと交換していく客なんて滅多にいない。

 さっきのジイサンみたいに、

 孫とか、子どもとかに持って帰るくらいで。

 それも、カワイイぬいぐるみを。


 どう考えても、

 オレみたいなミドリの体毛のカエルなんて、

 選ばないに決まってるし。




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