レンタルな関係。【番外編】

 ココロココニアラズ…

 そんな調子で仲居室に戻ると。


「栄莉ちゃん? なんだい、ぼうっとして」


 心配顔の青山さん。


「顔赤いねぇ。具合でも悪いのかい?」

「あ、いえ。なんでもないです…」


 い、言えない。

 お客様のラブシーン、

 ステキなのと強烈なのと、

 二本立てで鑑賞してしまったなんて。


「ちょっと休みな。ほら、冷たいものでも飲んで」


 青山さんが差し出してくれた冷たいお茶をうけとって。

 ぐびびっと飲み干して。


 はぁ…

 お付き合いするっていうことは…

 もちろん、ああいうことをするんだよね…


「キャーー……」

「…栄莉ちゃん? お茶に照れてどうしたんだい?」


 青山さんの手がおでこに当てられる。


「暑いからねぇ、最近。かわいそうに。無理すんじゃないよ。それじゃなくたってアンタ変わってるんだから、それ以上変になったら、アタシの仕事も増えちまうからね」


 やれやれ、という顔で笑った青山さん。


「青山さん…恋愛っていいですねぇ」

「は? なんだい、急に」

「私も…恋したくなりましたぁ」

「…そうかい。何で急にそうなったのか分かんないけどね、頑張りな」


 でも…

 私にできるかなぁ、ああいうこと。


 ………。


「む、無理かも…」

「…大丈夫かい、ホントに」


 仲居室にいるあいだ。

 私は終始、ぼけ~としてた。




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