レンタルな関係。【番外編】

「恋愛かぁ」


 キスしたり、

 え、え、えっちしたり。


 恋もしてない、もちろん相手もいない私には、全然遠い話だよなぁ。


「このまま恋できなかったら、どうしよう」


 自分の言葉にシュン…としてしまう。

 旅館に訪れる仲のいいカップルを見るたびに、

 自分には関係ないことだし、なんて思ってはいたけれど、


「やっぱり…恋、したいなぁ」


 好きな人と時間を共有できるって、きっと幸せなことだろうなぁ。

 あのお客様たちも、すごく楽しそうだったし。


「先輩、どうしてるかなぁ」


 ふいに漏れた自分の言葉にはっとする。

 いつのまにか、高校時代の先輩のことを思い浮かべてた。


 同じ文芸部だったひとつ年上の先輩。

 カッコいいって感じの見た目ではなかったけれど…

 メガネをかけた雰囲気とか、

 落ち着いてるところとかが大人っぽく見えて。


 面白い本を教えてくれたり、課題につきあってくれたり。

 さりげなく優しいところが、好きだった。


 先輩が卒業してしまうとき。

 おもいきってメルアドを聞いたけれど。


「勇気がでなくって…」


 一回も送れてなくて。

 しかも。

 先輩が卒業してから気づく私も、ホントにバカだなぁ…と思ったけど。

 
「どうして自分のアドレス教えなかったんだろ…」


 聞きだすことだけで精一杯だったんだよね…

 自分のも渡してたら、ひょっとしたら…先輩のほうから来てたかもしれないのに、メール。





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