レンタルな関係。【番外編】

 全てのお客様を送り出して。

 また午後になって忙しくなって。

 いつものように、慌しい一日が終わって。


 朝、唯衣さんたちを見送ってから、

 私は一日中、なぜかずっと先輩のことが頭から離れなかった。


「栄莉ちゃん、明日から二連休だろ?」

「はい。お休みいただきます」

「どっか行くのかい?」

「いえ…何にも予定はないんです」

「あら、なんだい、もったいない」

「はい…なにかしたいんですけど、なんにもないんですよねぇ」


 お休みはうれしいけど、

 予定が何もないって…

 このお仕事を始めてから、お友達は休みが合わなくなっちゃったし、

 結局だらだらと時間を過ごすしかないんだよなぁ。


「まあ、休み中、気をつけるんだよ。変な男にひっかかったりしないようにね」

「はい。そのへんは全然大丈夫です」

「そうかね。アンタぼんやりしてるから心配だよ、アタシは」


 ガハハ。

 いつものように元気に笑う青山さんに「おやすみなさい」の挨拶して、

 私は自室に戻った。



 部屋に戻って、帰り支度をしながら。

 
「……」


 携帯に残る先輩のアドレスとにらめっこ。


「ううう…どうしよう…」


 無理、だよね。

 っていうか、

 あて先不明で戻ってきたら…

 もっと悲しくなっちゃうし…


「でも…」


 唯衣さんたちの楽しそうな姿。

 思い出すと、やっぱり…


「私も…恋、したい」


 恋、というか…

 先輩に、もう一回、

 会いたい。


 会って…

 あの時言えなかった言葉。


「ちゃんと伝えたい」


 もしもダメだったとしても。

 この気持ちを引きづったままじゃ、

 きっと私、

 次の恋も、満足にできない。



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