鏡花水月◌˳⚛˚
だが、もうイライラする時間も余裕も無い。私が下らないことに腹を立てている間、クラスメイトや塾の仲間達は合格への道を紡いでいる。───早く、勉強をしなければ。
早く勉強をしなければ、また落ちる。母親は周りへ責任転換。そして、きっとあの日の繰り返し。唐突な恐怖に襲われ、大好きなチキン南蛮を残し、母親の『なんで残すの?』という声も無視して、部屋へと戻った。
「はぁ」
思わずため息が漏れる。また勉強。勉強。勉強。学校でも勉強。家でも勉強。休日も勉強。だが、これが普通なのだ。当たり前なのだ。泣き言や不満は言っていられない。受験生はこれが普通なのだから。
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