鏡花水月◌˳⚛˚

***

制服も冬服へと完全移行となり、ぱらぱらと白い雪が降り始めた。教室は暖房が効いているが、もう間もなく受験の日がやって来るということで、空気は冷めきっている。教室に居ても、暖かさの微塵も感じられない。こんな中、友人と騒ぐ者は誰も居なかった。恐らく、騒げば無言で冷たい視線を注がれるだろう。
私は、塾で作ってもらった定期考査対策プリントを机の上に広げ、周りと同じように勉強をした。こうしていると、順調に受験勉強ができている気がするのか、それともあの家に居なくていいからなのか、安心する。多分、後者。

「ねえ、千里ちゃん。」

「なに?」
< 7 / 20 >

この作品をシェア

pagetop