せめて夜が明けるまで

4月の海は寒い。

あのとき以来だなあ、ここに来るの。
あのときも寒かった。

夜の海は相変わらず暗くて怖い。

でも今日は朝日がいないから、私は果てしなく続く暗い海に怯えたままだった。


「お葬式抜けてきちゃった」

朝日が死んだなんて認めたくなかった。

もしかしたら、明日の朝起きたら朝日が隣で寝ているかもしれない。

起きたら笑って"おはよう"って言ってくれるかもしれない。

もしかしたら、これは悪い夢なのかもしれない。

何度もそう思った。


でも一昨日も、昨日も、今日も。
起きても、隣に誰も居なかった。

もうこの3日間で、朝日はもういないんだって思い知らされた。


「なんでよ朝日…っ!ずっとそばにいるって…ひかりと一緒だって言ったじゃない!死ぬなんて嘘よ…」

叫んだって、なにもかえってこなかった。

ただただ、波が押し寄せたり引いたりする音が聞こえるだけだった。

「朝日の嘘つき…」

朝日がいないと、こんな沈黙耐えられないよ。

なにか言ってよ朝日…。
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