【短編】君だけを愛したい
「渉ちゃんの教室行ったら、和樹先輩が教えてくれましたよ?」
そう言いながら、オレの隣に平然と座る崎村に心の中で溜め息を吐いた。
オレの睡眠の邪魔までするつもりかよ……
「はいっ、渉ちゃん!」
「……何?」
オレの冷たい態度に臆することもなく。
満面の笑みを崩さない崎村がオレに差し出したのは、正方形のランチボックス。
「サンドウィッチ、作ってきてみました♪渉ちゃんの大好きな“ハムエッグ”」
「そんな情報、誰から聞いたんだよ……」
つい受け取ってしまい渋々蓋を開けてみれば、確かに好物のハムエッグのサンドウィッチが詰められていて。
教えた覚えもないのにオレのことを知られていることに、口の端がヒクヒクと引きつるのを感じていた。