【短編】君だけを愛したい



「渉ちゃんの教室行ったら、和樹先輩が教えてくれましたよ?」



そう言いながら、オレの隣に平然と座る崎村に心の中で溜め息を吐いた。


オレの睡眠の邪魔までするつもりかよ……



「はいっ、渉ちゃん!」


「……何?」



オレの冷たい態度に臆することもなく。


満面の笑みを崩さない崎村がオレに差し出したのは、正方形のランチボックス。



「サンドウィッチ、作ってきてみました♪渉ちゃんの大好きな“ハムエッグ”」


「そんな情報、誰から聞いたんだよ……」



つい受け取ってしまい渋々蓋を開けてみれば、確かに好物のハムエッグのサンドウィッチが詰められていて。


教えた覚えもないのにオレのことを知られていることに、口の端がヒクヒクと引きつるのを感じていた。



< 12 / 41 >

この作品をシェア

pagetop