【短編】君だけを愛したい
掴んでいた腕を離し、崎村を置いて屋上の出入口となる扉へ向かって歩き出した。
もうすぐ、チャイム鳴る頃だし教室行かねーとな……?
「渉ちゃんっ!!」
「んー……?」
背中越しに聞こえた崎村の声に、振り返って視線を向けると
「私……渉ちゃんの“彼女”?」
「……違うの?」
不安げな顔をした崎村に、首を傾げて笑顔で質問返し。
今更“違う”なんて言われたらヘコむんだろうなー…なんて、思ったり。
「違わないっ!!」
満面の笑みを浮かべた崎村が駆け寄ってきて、スルリとオレの腕に絡み付いてくる。
……今日からココが、崎村の定位置。
「渉ちゃん、大好き♪」
「……知ってる」
これから先も、オレの隣には崎村が、崎村の隣にはオレがいられるように。
ずっと愛してやるよ、君だけを……