Airis 2






「へ、奈央?!何泣いてんだよ」




「……泣いてないから」




「いやいや、泣いてるから!」




湊のことを考えると胸がキューっと苦しくなって。
知らないうちに涙がこぼれてきた。



しょっぱい味が口の中に広がる。



涙ってこんな味なんだなあ、なんて考えると更に泣けてきて。
目の前の湊が涙でぼんやりとしか見えなかった。




「ねえ、湊……」




「ん?」




「……好き」




一瞬赤くなって照れた湊はそのあとちょっと切なそうな顔をして。




「……俺もだよ」




きっと湊は分かってるからそんな風な顔をする。
わたしがこんなことを言うときは、たいてい心が落ち込んでいるときだってことを。









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