Airis 2
「大地くん……」
「ん?」
丸椅子のままそっと寄って、脈を測りながら聞き返す。
「タケルに……嫌われちゃったかな?」
そう言うととうとう涙が溢れ出した。
「あー、ほらほら泣かないの。安静にしてないと」
手首に袖をかぶせて沙衣ちゃんに向き直る。
「真鍋が怒ってるのはさ、沙衣ちゃんのこと嫌いになったとかじゃないよ」
「じゃあ…」
「心配してる、ってこと。本気で怒るくらいね」
「………嫌いになったわけじゃない?」
「そりゃそうだよ。だってこの間嬉しそうに沙衣ちゃんがつくった肉じゃがの話してたし」
塩と砂糖を間違えてたことにはあえて触れずに。
ここでまた泣かれたらさすがに困る。