sinner
2・sinners

 
 
 
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なんか、勝ち気そうな子だなあ。


「隣に越してきました瀬尾です。家の中が片付くまで、ご迷惑をおかけするかもしれませんが――……」


春先のこと。引っ越しの品を受け取りながら、瀬尾さん――彼女に感じた第一印象は崩れることなく、もう少しだけ挨拶の言葉は続いていく。
奥二重の垂れていない目、やや細めの眉に通った鼻筋と薄い唇、肉付きのあまりないと感じる身体も勝手に、僕が受けた印象からその間外れるようなことはなく。
唯一、右の目尻にある泣き黒子だけが、そんな彼女には合っていないように感じた。


「どうぞ宜しくお願いします」


ああ。でも、この声は心地いいやつだ。ぼくの好きなトーン。




季節的に仕方のないことだけど、ここのところ仕事が連日忙しかった。今日でやっと一段落して気が抜けたのか、眠くて脳が上手く働かない日曜の、時刻は十八時。
彼女の右後ろにいた男が続けた自己紹介は覚えていない。隣に越してきた同棲カップルは表札を最後まで出さなかったから、ぼくは結局、それを知ることはなかったんだけど。


「神谷です。こちらこそ、宜しくお願いします」


ご丁寧にどうもとぼくが頭を下げれば、彼女も同じようにする。一足先に顔を上げて見下ろした彼女のつむじが真っ白で、ちょっと綺麗だなと見惚れ、己の変わったフェチを発見したのは誰にも秘密だ。




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