sinner

 
「――これ、迷惑じゃなければどうぞ」


「あっ、りがとうございます」


「いいえ。どうか愛でてやってね」


「はい。それはもちろん」


そして、時折こうして、お兄さんは自分が咲かせた花をわたしにお裾分けしてくれる。


「それじゃあ、おやすみなさい」


「おやすみなさい」


お兄さんからのお裾分けの花をそっと握る手とは別のわたしのそれには、ライターと煙草。
いつも、この瞬間だけは禁煙を誓う。


「どれに飾ろっかな」


貰った花を抱えて幸せな気分に浸る。
そんな趣味はなかったけど、一年前から揃え始めた背の低い小さな花瓶の幾つかを頭に浮かべた。そのどれかに花を飾るのだ。


最近のわたしの癒しの一部となっている。




「……」


けど、わたしの幸せはそこで終わりを告げる。
振り返り見た自室は、もうとっくの前に灯りが消えていた。


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