sinner
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それは、平々凡々な一日を過ごしての帰路のこと。
仕事も定時に終わらせることができたから、デパートに寄って、服と靴、チーズにお惣菜、果てには二人では食べきれないホールケーキまで買い込んできてしまった。二段のケーキなんて物語の中みたいだと、買うときは少し恥ずかしかった。
最寄り駅の改札を抜け、本当は休憩したい気持ちを抑えて歩を進める。立ち止まってしまったら、こんな重い荷物たち到底持って帰りきれない。
「……っぁ」
一瞬ふらついた足が何もない場所で躓きそうになり、体勢を直して顎を上げる。
一度だけ、夜空を見上げた。
駅前は明るくて、アパートからでも星がなかなか見えない都会の夜空はスモークがかかっている。
「あっ!!」
そんな中、夜空を一筋の流れ星が見えたような気がした。
それは、気のせいだったかもしれないけど、少しだけ、プレゼントを貰ったようで嬉しくなった。
そんなことくらいで力がみなぎってしまう単純なわたしは、強く荷物を握りしめ、ヒールの音を綺麗に響かせることに成功した。