振った男
「一樹、泊まってもいいよ。ベッド、狭いけど、二人で寝れないこともないし」


「え?あ、そうか…あ、じゃあ、家に連絡をいれておくよ」


連絡を終えた一樹の手を握った。握り返してくれた一樹は、反対の手で私の髪を撫でる。

優しい瞳で私を見つめてくれる。一樹が好きだという人に向けていた瞳と変わらなく、心臓が高鳴った。期待が胸を膨らます。

もしかして、好きになってくれた?


「一樹、私のこと、好き?」


「うん、好きだよ」


「あの子よりも…んっ!」


あの小夏という子よりも私を好きになってくれたのかと聞こうとしたけど、続きの言葉は塞がれてしまう。

一樹との初めてのキスを私は、良い方向に解釈をした。私のほうを好きになったから、キスをしてくれたのだと。

一樹は、そのまま私を押し倒して、躊躇いがちに体を触ってきた。

私は一樹の初めての彼女だったから、一樹の初めての体験相手も私になる。ぎこちなさはあったけど、優しさが伝わってきて、本当に嬉しかった。
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