振った男
「舞花さんって、小夏ちゃんと違うタイプだね」


「こら、そういうことは言わないの。静かにしなさいよ」


一樹とリビングのソファーに座るとキッチンから二人の会話が聞こえてきた。小夏さんと違う…それは私も分かっている。

でも、私は私だし、小夏さんと違うからこそ一樹は私を見てくれている。そう信じるしかなかった。


「うち、うるさくてごめんな。大丈夫か?」


ほら、ちゃんと私の顔を見て、私の心配をしてくれる。だから、不満も不安もない。

一樹が笑うから私も笑っていられる。


「ううん。お母さん、きれいだし、妹さんもかわいいね」


「あら~、ありがとう。はい、どうぞ」


お母さんは渡したクッキーをお皿に入れてくれて、紅茶と一緒に出してくれた。

ちゃんと歓迎されていると思ったから、にこやかな笑顔で「いただきます」と言えた。

その後、お母さんと妹さんは買い物に出たので、私と一樹は、「ゆっくりしてね」と残された。
< 15 / 29 >

この作品をシェア

pagetop