振った男
「はあ、緊張した~」


「そう?舞花はいつもと変わらないからすごいなと思ったけど」


「そんなことないよ。嫌われないようにと必死だったし」


「舞花は明るくて、いい子だし、かわいいから、大丈夫。嫌われないよ。もし、何か言われてもちゃんと守るから」


私の肩を抱いた一樹は、ゆっくりと顔を近付けてキスをした。軽いキスから深いキスに変わって、ソファに押し倒され、ニットが捲り上げられる。


「ちょっと、一樹…ここでは…」


「クスッ、そうだね。誰か帰ってきたら、まずいね」


いたずらを見つかった子供のように笑う一樹は、軽々と私を抱き上げた。


「えー、おろして!」


初めてのお姫様抱っこに狼狽えたが、そのまま一樹のベッドまで、運ばれてしまう。

一樹の匂いのするベッドに仰向けに横たわった私は、顔を横に向ける。初めて入った部屋は一樹らしく物が少なく、シンプルな部屋だった。

机の上にあるリスの小さなぬいぐるみだけが、この部屋に不釣り合いな感じがした。
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