振った男
ちゃんと私を見てくれる一樹が大好きだった。


「ううん。何でもないよ。ちょっと前のことを思い出していただけ」


「ふうん。嫌なことがあったら、いつでも言ってよ。いつでも聞くから」


一樹は本当に優しい。


「あ、そうだ。ねえ、クリスマスなんだけど、どうする?どこかホテルとか予約する?付き合って初めてのクリスマスだから、特別なことをしたいよね」


初めて二人で迎えるクリスマス。最高の思い出を作りたいと思っていた。ホテルを予約するなら、早くにしないと間に合わない。

あとレストランも予約が必要だ。

一樹は少しのんびりしたところがあるから、デートの場所は大体私が決めていた。

クリスマスも私が話さないと当日まで予定さえも立てないだろう。だから、少し強引でも話を進めるのが、正解だ。


「クリスマス?…あ、ごめん。俺、クリスマスは毎年、家でパーティをすることが決まっていて、今年もそのつもりで…でも、昼なら大丈夫だから、ランチの予約をする?」
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